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そうして行くことになったのが西穂高岳。彼のおすすめ初心者コースらしい。ロープウェイで登ってから1時間ちょっとで小屋があるし、そこのラーメンがまたうまいんだよと。
計画も装備の準備もすべて彼がしてくれた。1泊2日の小屋泊まり。山小屋なんて初めて泊まるわたしは、不安とわくわくと、そしてどきどきで。いきなり泊まりについて行くなんて、軽いやつだと思われてるかも、なんていろいろ考えたりもした。
そのときのわたしを今思うと、ほんとに恥ずかしくなる。浮かれて行った西穂で、わたしは次から次へと打ちのめされることになるのだ。
まず小屋にたどり着くまでに、わたしの体力はすでに限界を迎えた。山に登るのってこんなに大変なの?もっと楽しげにわいわいしながら行くつもりだったのに・・・。巧はわたしのずっと前のほうで歩いてるし、わたしは息も絶え絶えだし。
それでもなんとか2時間以上かかって着いた小屋で一息つく・・・つもりだったのに、今度は人人人で混み合っててなんだか落ち着かない。なんか、もっと温泉宿みたいなほっこりしたのを想像してたのに。衝撃が矢継ぎ早にわたしを襲う。そういえば、巧が「ほんとはテントのほうが快適なんだけど」ってつぶやいてた意味が、そのときようやく分かった。
「今夜は早く寝て、明日は西穂の独標を目指すよ。頂上はムリだけど、そこでもすごくいい景色だから」
(え?頂上じゃないの?)幾分がっかりしながらも、つれてきてもらった手前、何も言えない。
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