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そして、狭いふとんで、疲れているのに熟睡もできず、朝4時に起こされ出発。案の定、すぐに息が上がった。丸山を過ぎてから、道もなんだかどんどん岩だらけで険しくなって行く。独標まで1時間半だと聞いていたのに、なかなかたどりつかない。さらに足がふらふらと不安定になって、なかなか思うように動かない。体が動かないのと自分がふがいないのとでだんだんイライラしてくる。なんでこんなところ安易に来ちゃったんだろう。
そのとき、巧が不意に近づいてきて、ずっと下を向いていたわたしの後ろを指差した。
「速水さん、あっち、振り返ってごらん」
イラつく気持ちを抑えて、言われた通りに振り向いてみる。とんでもない光景が目に飛び込んできた。
「え・・・すごい・・・」
その一言以外、しばらく言葉が出なかった。朝日を浴びた山の稜線がどこまでも連なっていた。立ち止まって動けなくなる。少し落ち着いたら、やっと気持ちに余裕が出てきた。
こんな場所があったんだ。あまりの壮大さに、今の自分のちっぽけさを感じずにはいられなかった。
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