生沢と赤坂

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生沢と赤坂

恋心というのは自覚しない方が幸せなんじゃないかと俺は思う。 恋をすると胸が痛くて、そいつを見るだけで体が熱くなる。現在、俺の中心も熱を帯び始めているのだが、今はそれどころではない。 俺こと生沢康介は、最近恋に落ちてしまった。 それも厄介なことに、同性にだ。 俺は今まで女にしか恋愛感情は抱かず、何回か体を重ねたりもした。勿論やることはやったし、それなりに経験もある。 ただ、今までの恋愛もそこそこ本気ではあったが、どこか熱に溺れるということは無かった。 だからこそ今の状況に俺は頭を抱えた。 現在、俺は修学旅行で京都に来ていた。 自由行動も早々に終わり、夜ご飯も食い終わって風呂の時間になった、がここで問題が起きた。 全員が一斉に風呂に入ることは無理なため、クラスごとに入ることになった。 俺の想い人兼親友である、赤坂光希とはクラスが同じで、高校一年の時にクラスが同じで出席番号も近いが故に仲良くなった。二年目の今も同じクラスで、二年目の最初の方は普通の友達として接していた。 だが、日に日にその友情だと思っていたものが愛情に変わっていて、気がついた時には元に戻れないほど赤坂を好きになっていた。 正直、赤坂の見た目は決して女には見えない。だが、身体は細身で髪も男にしては長いしサラサラだ。背丈は俺の方が少しだけ大きいがそんなに変わらない。 今日の自由行動も赤坂と何人かを連れて回っていたが、俺は赤坂の隣をキープし続けた。さり気なくアイスを食った時も「赤坂の美味そう。一口ちょうだい」「しょうがないなあ、はい」であーんもしてもらった。へへへ、思い出すだけで口元が緩むぜ。その後、俺もスプーンにアイスを乗せて赤坂の口元へ持っていくと、さも当然のようにそのままぱくりと食べてくれた。おいおい!恋人みてえじゃねえか! こんな具合で修学旅行を楽しんでいた俺は、完全に頭から抜けていたんだ。 風呂が赤坂と同じということを。
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