ぷろろーぐ~オータムフェスより~

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「──ホント、よかったよね~。ステージが中止にならなくて~」 「うんうん。なんでも聞いた話じゃ、ここの準備をしている時に資材が崩れ落ちるって事故があったんでしょ?」 「あたしが聞いた話だと、その現場に女の子が二人いて資材の崩落に巻き込まれたんだけど奇跡的に傷一つ負わなかったらしいよ」 「へぇ~、それってマジでミラクルじゃん~」  それは、清美市で催されている《オータムフェス》のミュージックアートエリアの一角にある音楽ステージの控え室で交わされた会話のひとつ。  ただ、その会話の話題に上がっている準備期間中の事故について、事実は微妙に異なっている。  準備期間中に起きた資材が崩れ落ちた事故の現場には、交わされた会話通り二人の女の子と────とある人物からの頼みで、二人の女の子たちに危険が及ぶかもしれない事を予見し、“もしもの時”には二人の女の子たちを助けるべく事故現場に駆け付けた三人目の女の子がいたのだ。  しかし、三人目の女の子が現場に駆け付けた時には山積みにされていた資材は崩落を起こしていて、二人の女の子たちへと襲い掛かる寸前だった。  三人目の女の子は為す術無く、資材が二人の女の子たちへと雪崩落ちる光景を目にした。  あの時は、一瞬、最悪な結末が頭を過り、本当に肝を冷やした。  現実の結末はほぼ前述の通り、大きな怪我もなく二人とも無事だったわけだが。 「プログラム番号四番の皆さん、あと少しで出番ですので舞台袖へお願いします」
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