お祓い

1/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 例年より雪が少ない十二月だった。  飲み屋街で、新築工事をしていた野村板金の野村さんから、工事を手伝ってほしいと連絡が来た。材料不足がつづいて工期が遅れ、年末になってその遅れを取りもどすため、他の工事現場も忙しくなり、作業員が不足しているという。  自家営業の私の仕事は夕方からだ。野村さんはそのことを知っていて連絡してきた。 断わる理由もないので、作業を引きうけた。作業は住宅に外壁材を貼る作業の補助だ。  現場は、一階が居酒屋「土蔵」の店舗、二階が経営者・佐藤さんの住宅だ。道路に面した店舗の玄関がある東側と、北側の外壁工事はすでに終わっていた。  私が手伝うのは、住居部分の玄関がある建物の南側と、裏である西側に、外壁材を貼る作業だった。  指定された大きさに外壁材(長さ2.4メートル、幅50センチ弱の、裏にウレタンフォームが貼られた薄手の鋼板)をそのままか、切断加工し、足場に上っている野村さんへ渡す。  野村さんは、すでに固定してある外壁材のジョイント部に、新たな外壁材を噛ませ、釘で固定する箇所に、自動釘打器(エアー・・・、と呼ぶらしいが、名前がわからない)で釘を打ち、固定してゆく。  寸法を測り違えたり、切断箇所をまちがえない限り、指定された寸法に、外壁材を切断して、渡すだけの単純作業だ。ちなみに使う道具は、メジャーと大きな角度定規、そして、超合金の歯が付いた小型電動鋸だ。  つまり、木の板に寸法通りに線を引き、鋸で切断する、木工作業と同じだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!