あらすじ

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定年後の文一郎は、出会ってしまった。散歩コースにしている楠穂神社で、五歳児の姿の神様と……。 初めは、ただの子供だと信じることが出来なかった文一郎。しかし、神と名乗る子供は池の上を歩き、自分が神である証明を惜し気もなく、見せてきた。正しく神業という以外、表現することが出来ない五歳児の所業に、文一郎は、彼を神と認めるしか無かった。 まだ、疑い半分の文一郎だったが、 「今日からお前は、私の狛犬だ」 と強引に神の遣いっぱしりにされる。 神の遣い通称狛犬となった文一郎は、神様の指示のもと、町の困っている人々の手助けをすることになった。それは、弱まった神様自身の力のためでもあり、同時に神様に守られる人のため、町が発展していくためだが、神様の横暴な態度に文一郎は、先が思いやられる。 そんな文一郎もお構い無しに、手始めに耳の遠いお婆さんの大切な物を探すことを神様は申し付ける。お婆さん曰く手放せないソレを見つけ出すため、文一郎は、町中を探すはめになる。 しかし、耳が遠く会話もままならず、物忘れも多いお婆さんに振り回され、探し物は難航する。走り回っていたが、文一郎も年のせいか、直ぐに探すのにくたびれた。駅前で休憩を取る文一郎の前に現れたのは、花屋の娘の仁奈だった。 彼女は、いつも仏壇に飾る花を買うために行き着けにしている花屋の娘だ。仁奈は、実家の花屋を手伝いながら見合いをし、ことごとく撃沈しているアラフォー女。この日もお見合いパーティーに行ったものの、男性人の顔を見るだけで萎えて帰ってきたところだった。お見合いパーティーを早々に抜けてきたことを母にバレたくない仁奈は、文一郎と一緒にお婆さんの手放せない物を探し時間を潰すことにする。 客商売の仁奈は、顔が広く、お婆さんを見たという人を辿る。その過程で文一郎は、長く住む自分の町の広さを知り、仁奈は、文一郎が今まで培ってきた社会人としてのスキルを垣間見る。そして、文一郎達は、二人が会った駅の中で探し物を見つけ出した。 神社に戻りお婆さんが手放せないおんば(乳母車)を返して、お婆さんを二人で見送った。仁奈も帰ろうとした時に、突如現れた神様から狛犬は、二人必要だとして、仁奈も狛犬に任命されてしまう。突然のことで訳が分かっていない仁奈を余所に、これからも神の狛犬として走らされる予感を覚える文一郎は、そっと溜め息をついた。
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