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回らないお寿司を産まれて初めて食べたが,こんなに美味しいものがあるんだと感動した。これまでお寿司は機械が握り,そこに冷凍の刺身が乗せられているのだと思っていた。
カウンター越しに立つ年配の職人さんが,ほんの僅かな作業で驚くほど綺麗なお寿司を目の前に置いてくれた。
「あ……食べられる……美味しい」
思わず口に出てしまった。
「え……? あんた寿司苦手なの?」
彼女が驚いて私を見た。私は声に出してしまったことを後悔しながら,人が触ったものを食べるのができないことと,回らないお寿司が初めてで,こんなに美味しいお寿司は食べたことがなかったと伝えた。
「子供のくせに,あんたも大変な人生送ってんだね。まぁ,あの姉ちゃんの長女だもんね……こんなにまともな子になってるほうが驚きかな……」
「すみません……」
「一応,褒めてんだけど」
私たちの会話に職人さんも喜んでくれて,見たことのないお寿司をサービスしてくれた。
「取り敢えず,私はあんたのことを茉莉花って呼ぶから,あんたは私のことをお姉ちゃんって呼びなさい。いいね,死んでも叔母さんなんて呼んだりしないように!」
「え……?」
「えっ……? じゃないでしょ。お姉ちゃんでしょ!」
「あ……はい」
そう言って,お姉ちゃんは日本酒とお造りを頼むと嬉しそうに笑った。
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