第一章3 テロリーマン

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 そんな華やかな表舞台とはべつに。  試合の前日。ダイブインシステム《ナーブ・オン》を。  一人でゴソゴソといじっている男がいた。 「冬木(ふゆき)さん、まだやってるんですか?」 「ああ。最後の調整だ。まだシンクロ率が完璧じゃない」  答えた三十後半の中年男性、冬木は。  イベント主催企業ではなく、ウルバト運営会社の技術主任だった。 「誤差0.02秒なんて、その日の湿気や気温で変わりますよ」 「それが勝敗を分ける時もある。プロの大会だ。手は抜けん」 「けど、もう十一時まわってますよ」 「いいよ、帰って。あと少しだから俺がやっとく」 「そっスか?」 「この仕事が終わったら、俺はここを辞めるからな。最後の仕上げだ」 「そうスか。じゃ、俺たちは帰りますんで」  部下のエンジニアたちは帰っていった。  彼らの姿が完全に見えなくなってから、冬木は違う作業に取りかかる。  外の自家用車からケーブルを運んできて、通常の配線とは別に取り付ける。  それはビル屋上の避雷針とシステムを直結していた。
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