11人が本棚に入れています
本棚に追加
丁度スープが飲み終わると同時に雪さんがやってきてスープカップを下げてくれる。「ありがとうございます」と私が返してもあっさり無視されてしまう。
「さぁ、こっちへ来て」
彼……裕太さんはまた私の手を引いて家の中を歩く。
絨毯のひかれた長い廊下にはよくわからないけど高そうな壺が置かれ、壁には肖像画が何枚もかかっている。黙ってついていくと、裕太さんは桜の絵が書かれた扉の前で止まる。
「ここが桜の部屋だよ」
そうして扉を開け、私を中へ入れてくれる。広い部屋だった。大きな窓、天蓋付きの大きなベッド、クローゼット、ドレッサー、机。
白を基調とした部屋だった。
「……相部屋?」
思わずそう聞いてしまうほどの家具の多さと広さに私は驚きが隠せない。私のそんな問いを聞いて裕太さんは大きな口を開けて笑い出した。
「桜の1人部屋だよ」
笑いが収まった頃、裕太さんは私にそう言い、クローゼットを開ける。
そこにはワンピースが何着もかかっていた。
「好きに着ていいからね」
裕太さんは私にそう言い、一通り部屋の説明をしてくれる。ここにあるものは全て使っていいらしい。「何かあった時に連絡して」と私に携帯を渡して裕太さんは部屋を出て行った。
携帯を開いてる連絡先一覧を見る。裕太さんの連絡先が入っているのを確認して携帯を机の上に置く。
広く、静かな部屋は落ち着かない。いつか慣れるのだろうか。私は大きなベッドに横になる。
今日は色々あった。窓の外をぼーっと眺める。
時計の秒針の音がやけに響いた。
最初のコメントを投稿しよう!