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「桜はやっぱり綺麗だね」
裕太さんはそう言って私に笑いかける。
あぁ、この人もやっぱり私の外見しか見ていない。なんて、少し孤独感を覚える。
何を考えているのだ、私の中身なんて見るわけがないでしょう。こんなに裕福な生活を送らせてもらって、何を贅沢を言おうとしてるの。なんて、心の中で自分を叱りつつ、私は裕太さんに笑顔を見せる。
「ありがとう」
私がそう言うと、裕太さんは満足そうに笑い、「さあ行こう!」と私の手を引いた。
運転手付きの車の後部座席に2人で座る。ここへくるときも思ったが、この家には運転手がいるらしい。
この間と同じ運転手の落ち着いた運転で、私たちは街へ向かう。
私の住んでいた遊女たちの街はここからだとどう行くんだろうか。みんなは、生きてるだろうか。
あそこでは年に数回、自分で自分を殺めてしまう遊女がいる。
あそこで生き抜くのは、かなり難しいらしい。
「ほら、もうすぐだよ」
声をかけられた時には既に見たこともないくらい華やかな雰囲気の場所にいた。
大きなビル、華やかな服を着た女性、男性。着ぐるみを着た人が子供達に風船を渡している。
「さぁ、降りて」
車はあるビルの前に止まる。
運転手さんが車のドアを開ける。
その大きなビルはショッピングモールで、私は裕太さんに手を引かれてショッピングモールに入っていく。
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