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それから私は高そうな服や靴を裕太さんの言われるがまま着たり履いたりして、裕太さんが気に入ったものを私にと裕太さんが買う。という流れだった。
それから衣類以外の身の回りのものを一通り見て回り、裕太さんが私にと買ったものは数え切れないくらいになってしまった。
「あの……ありがとうございます」
「ほら、敬語はダメ」
いや、こんなにしてもらって「ありがとう!」なんて言えるわけなくない?なんて私が思ってるのはこの人は知らないのだろう。
結局その日はずっと買い物をしていた。
夜は高そうな店で、高そうな料理を並べられ、味もわからないままなんとなく食べ物を飲み込んだ。
「さぁ、帰ろうか」
裕太さんがそう言ったのは0時になる5分前のことだった。
ついさっき裕太さんにつけてもらった腕時計をちらりと見ながら私は頷く。
「桜は次の春から学校に通うから、その準備をと思って今日は買い物をしたんだ」
車が動き出すと、裕太さんは話しはじめた。
「桜の通う学校はね、雪も通うんだよ。雪も次の春からだから、同じ学年になる。クラスが同じだといいね」
「はい」
向こうは同じクラスじゃありませんように。なんて願ってるだろうけど。
裕太さん越しに見える積もる雪をぼーっと眺めながら聞いていた話は何1つ覚えていない。
ただ、なんとなく、裕太さんは寂しそうだった。
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