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雪も溶けきり、桜が咲きかけた頃、私は「学校」へ入学した。
雪さんとは隣のクラスだが、行き帰りの車は一緒だった。
雪さんとはなんの会話もない沈黙の時間が続く日々が続いた。
でも、優しくしてくれる裕太さんがいるし、
「桜!今からみんなでご飯食べに行かない?」
「行く!」
優しいクラスメイト達もいるから寂しいとは思わなかった。
恵まれていた。
「桜はさ、あのお屋敷にいたくないなと思うことはないのか?」
向かいの席、クラスメイトの北条聡が私に聞く。
「ない、かなぁ」
全くないと言えば嘘になるけど、あそこしか私の居場所はない。
「あんな大きい家、嫌になるわけないじゃない」
クラスメイトの女の子が笑いながら言う。
「そう、か……」
聡は少し表情を曇らせた。
「聡は……家が嫌なの?」
私は何も考えずに聞いてしまう。
私と聡は違う。聡は生まれつきお金があって、私はない。生まれてからずっとあそこにいたら窮屈かもしれないな。と聞いてから思った。
「うーん、ちょっと窮屈かもな」
そう言って聡は私に笑顔を見せた。
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