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雪が手にひどい火傷を負ったのはその夜のことだった。
「雪!それはどうしたの?」
私がそう聞くと「料理をしていて熱いフライパンの底を素手で触って火傷をしたの」と雪は話した。
「それより!2人で買い物に行く許可が出たよ!」
雪がまた嬉しそうに話す。
「わぁ!すごい!電車にも乗れるのね!」
そう、私は電車に乗ったことがない。乗る必要すらなかったのだから。
今思えば同い年の子が経験していて当たり前のことを私は何一つ経験していない。
なんだか、少し寂しくなった。
「そうよ!電車にものれるの!」
そうして話は週末のおでかけの話になった。
「ほら、2人とも仲が良いのは良いことだけどそろそろ寝ないと、明日起きれなくなるよ」
裕太さんのその声掛けがあるまで私たちはずっと話していたのだ。
「あ、本当だ!じゃあおやすみ、雪」
「おやすみ、桜」
「裕太さんもおやすみなさい」
私たちはそうして、その日は自室に戻った。
私は部屋で「夏休みの目標」と書かれた紙を手に取る。
目標、かぁ……。
私の目標は、花魁として強く生きることだった。
自由になった私は正直なにを目標に生きていけばいいかわからない。
とりあえず適当に「テストの点数を20点上げる」なんて書いて私は布団に潜り込んだ。
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