2.学校、へ。

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「あ、えっと……」 視線が合わせられない。 この人は私の常連さんだった人。もう2度と会わないと思っていた。会いたくもなかった。 「この子は桜ですよ。人違いじゃありませんか?」 雪がそう言ってくれるものの、男は「いや、雫ちゃんだよ。身請けされて桜って名前になったのかい?」なんて私に近付きながら声をかける。 「あれ?身請け人はいないの?危ないね。これから2人でどこかに行かない?学校に通ってる噂は聞いたんだよね」 そう言って私の肩に手を回す。雪が叩こうとするが止める。 「ごめん、雪。先に帰ってて欲しいの」 私はそう言って雪を返そうとするが雪は「ダメだよ!桜!」と、私の新しい名を呼んでくれる。 「雫ちゃん、行こうか」 そして私を連れて歩こうとした時だった。 「桜?その男は誰だ?」 聡の声が後ろから聞こえる。 慌てて振り返ると聡と聡の、ボディーガード?がいる。いや、え、そこまでお金持ちだったのか。なんて思いながらも言葉が出なくて黙り込んでしまう。 「おやおや、これは北条様の息子さんではありませんか」 この男は聡と知り合いだったらしい。私の肩からすっと手を引いて「この女を身請けしたのは北条様で?」と聞く。 「違うが、この女は俺の女だ」 今まで見たこともないような表情で相手を威嚇する。喧嘩をしたことがあるかのような目に私も警戒してしまう。男は「では、私は用事があるのでこれで」と慌てて言い、逃げるように去っていった。 「ごめんね、この女。とか俺の女とか言っちゃって。怪我はない?」 聡はそう言い私に優しく微笑む。雪もホッとした表情をしている。私はその優しさが嬉しくて、少し涙を流してしまう。 「あぁ、もう大丈夫だから」 そう言い私をぎこちなく抱きしめてくれる聡が優しくて、あったかくて、とても安心した。
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