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「お待たせしました。ココアです」
「ありがとうございます」
コトン、と置かれたティーカップをぼーっと眺める。
あの後私が街中で泣くもんだから聡が泣かせたと思われかねないから。と聡が車に乗せてくれて、聡の家まで来たのだ。
雪が聡と2人で話してみたい。と言って2人でどこかに行き、応接室に残された私はココアと睨めっこというわけだ。
コンコン
部屋のドアがノックされる。
「はい」
私が返事をするとドアが開く。
少しの隙間から覗く2つの目は小さな少女のものだった。
「桜さん?」
その少女は私の名前を呼ぶ。
「え、あ、そうです」
私がそう答えると少女はドアをそっと開けて中に入る。ドアをパタンと締めてトコトコ歩いて私の前の椅子にストン。と座る。
「私は夢です。聡の妹です。兄がいつもお世話になっております」
6歳か7歳くらいの少女から口にされたとは思えないような発言に驚く私をよそに、夢と名乗るその少女はニコニコと兄の話を始める。
聡が私のことを家で話しまくってることしか理解できなかったが、少女が楽しそうなのでよしとしよう。
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