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黒く肩で切りそろえられたつやつやの髪、小さな顔に大きな二重の目、真っ白な肌。美しかった。この年にしてこの美しさか……話し上手だしすぐ花魁になれるな。なんて昔の癖で少女のことを観察してしまい、この子が「無関係の人間」だと言うことを思い出し、慌てて「モテるだろうなぁ」と思い直した。
話は変わり、クラスの男の子の話になった。優しくて運動もできて勉強もできるハイスペック君らしい。
「なるほど、夢ちゃんはその男の子のことが好きなのね」
私がそういうと夢ちゃんは顔を赤らめて「へへ、そうなの」と言った。
その後に「お兄ちゃんには言ったらだめだからね」と付け加えた。
「わかった。秘密ね」
私はそう返す。それにしても遅いな。何を話してるんだろう。私がいたら話せないことなんだろうか。私は少し不安になりながらも時計を見る。もう30分経っている。
その時、部屋の扉が開いて、雪と聡が部屋に入ってくる。
「お待たせ……って、夢!?」
驚く聡とニコニコ笑う夢ちゃん。
「私ね、お話してたの」
夢ちゃんはそう言い「お邪魔しました~」と聡の隣を素早く抜けて部屋を出て行ってしまう。
「何話してたんだ?」と私に聞く聡に「秘密」と答えて残りのココアを飲む。
「ねえ、もう5時よ。雪、帰らなきゃ」
裕太さんは門限に厳しい。私がそう言うと「じゃあ送っていくよ」と聡が言い、「いいえ、大丈夫よ。桜、急いで帰ろう」と慌てたように雪が言う。
「……?じゃ、じゃあ、また学校でね」
雪に手を引っ張られながら私は聡に手を振る。
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