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絶対におかしいのだが、おかしいとは言えない。
私は雪に何度も話を聞こうとするが「私の不注意なの」の一言で済まされてしまう。
裕太さんに相談しようかとも考えたが裕太さんが完全に信用できると言い切れないのでやめておく。
夏休み2日目の夜。
庭があるから、と裕太さんに外に案内された。
たくさんの花が咲いている。今夜は満月で少し涼しくて、良い夜だった。
「見て」
裕太さんが一本の木の前で立ち止まる。
桜の木だ。
「桜の木だよ」
花も咲いていない桜の木を見せて何がしたいのだろうか。
裕太さんの言葉を待つ。
「桜はね、散っても散ってもまた美しい花を咲かせる。桜、君も美しいね」
妙な違和感を覚えつつ、何も話すべきでないと本能が私に伝える。
動くべきでない。とも。
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