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「ありがとうございます」
「ほら!敬語はなし」
私がお礼を言うと敬語は使うなと怒る彼。
さっきのより崩したつもりだったのだが、ダメらしい。
やり直して。と言わんばかりの彼の表情に私がこんな人に敬語を使わないなど、バチが当たるのではないかと思いつつ、
「ありがとう」
と一言言うと彼は表情をパッと明るくし、また歩き出した。
その後、私が連れてこられたのは大きな長テーブルのある部屋。テーブルの周りには沢山の椅子が並べられ、テーブルの中央には花。天井にはシャンデリア。
部屋の隅には小さな丸テーブルが置かれ、その上に燭台が置いてある。
「座って待ってて。暖かいスープを持ってくるから」
彼はそう言い、私を強引に椅子に座らせて私に何か言わせる隙を与えず、あっという間に部屋を出て行ってしまった。
静かだった。
なんの物音もしない。
人の声も、外の音すら聞こえない。
こんなに静か空間に1人残されたのは、私の記憶の中では生まれて初めてだった。
パタパタと2つの足音がして、おぼんを持った彼がやってくる。その後ろには私と同い年くらいの女性が慌てた様子でついてきていた。
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