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何よりも少年の服装に違和感を
覚えずにはいられない。
もう祭りが催されていると
勘違いしたのだろうか少年は
白の着物に身を包んでいたのだった。
美好の声に応答する素振りを見せず
黙り込んだまま少年はジッと彼女を
見つめた。
「 お祭りはまだなのよ、ごめんね。」
美好は続けてそう言うが少年はひと言も
話そうとはしない。
外は段々と暗くなり始めていた。
「 お家に帰らないとお母さん心配しちゃうよ? 」
推測でしかないが、きっとこの子は10歳くらいの
少年であろうと美好は考えた。
「 月が満ちた時、迎えに来る。 」
少年は、くるりと美好に背を向けると
そう低い声で呟くと姿を眩ませた。
「 何、今の……? 消えちゃった……ははっ。 」
普通の人間ではない。
霊的なものか、それとも化け狐か。
神経を尖らせ思考回路を巡らせた。
しかしながら、答えは見つからない。
美好は、ゾクゾクと恐怖で身体を
震わせながら神社へと足速に帰宅した。
「 じいちゃん、満月って次いつだっけ? 」
帰るなり美好は祖父に焦り気味に尋ねた。
「 次は、明日じゃのう。祭りと重なって
神秘的だと思わんか? まるで月から神様でも
降りて来そうではないか 」
ケラケラと笑っている祖父を前に
美好は先程の少年の存在が
満更にも思えなくなっていたのであった。
もしかすると、あの子は神様か何か
なのではないのかと。
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