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第一章「 はじまり。 」
「 美好、遅れちゃうわよ 」
聞きなれた呆れ声で目覚める朝は
いつもと何一つ変わらず平凡だ。
少女の名は、結縁 美好。
古き神社を管理している祖父の跡取りの為
婿養子となった父は朝から忙しくしていた。
「 パパ、忙しそうだね~ 」
寝坊したというのにゆっくりと制服に
着替えながら母親に声を掛けた。
「 最近は参拝客も少なくて神社の管理費が
足りないでいるのよ。 だから、祭り事でも
してみようっておじいちゃんがね。 」
溜め息混じりに母は言うと家族が食べ終えた
食器を洗いに台所へと戻って行く。
「 管理費がいる神様なんて笑えちゃうけどね 」
そんな、他人事のような言葉を呟いて
美好は仕度を終えた。
彼女は、周縁高等学校に
通う一年生である。
白のブラウスに紺色のワンピース。
そして、大きな赤色のリボン。
近隣の高校の中では女子から人気の制服だ。
登校中、背後から声が聞こえてくる。
「 美好ーっ!! 」
振り返るとそこには親友の姿があった。
「 おはよ~、えんちゃん。 」
透き通るほどに綺麗なブラウンの髪は
顎下程のショートカットだ。
美好と同じく周縁高校に通う
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