第1章

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答案用紙に答えを書き込んでいる生徒たちの手元を覗き込みながら教室を1周し、始めてからまだ10分程しか経っていない筈だが何時もの癖で、時計代わりに教壇の上に置いてあるスマホを手にして画面を見る。 あれ? 何だ? 此れは。 画面には、時間停止開始と書かれたボタンが表示されていた。 生徒の誰かの悪戯かと思いながらそのボタンを押す。 途端、音が消えた。 テストの真っ最中で教室の中は静かだったが、それでも30人以上の生徒たちが答案用紙に答えを書き込む音や紙が擦れる音が、教室のあちらこちらから聞こえていたのに。 スマホから顔を上げ周りを見渡した。 教室内の生徒たちは全員動きを止めている。 それだけで無く、教室の窓から見える道路上の車も人も犬も動いていない。 え!?悪戯では無く本物? そこで私は我に返り、解除ボタンを押そうとスマホの画面に目を戻す。 解除ボタンの下で注意と書かれた赤い文字が点滅している。 注意の下に連なる文字を読む。 解除ボタンを押せば、貴方に与えられた時間停止のチャンスは終わります。 時間停止している今、遣りたい事はありませんか? その文字を読んで私は咄嗟に、窓際の真ん中辺にいる生徒を見た。 生徒会長と薙刀部の部長を兼任している文武両道の少女。 彼女の大きな胸に目が引きつけられる。 彼女の担任になってから幾度となく妄想した事か、あの胸に窒息するくらい顔を埋めてみたいと。
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