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…しかも、襖を開けたのは壱さんだった。 自分の顔がみるみる青くなるのがわかる。 こんな時は、 …逃げるが勝ちだ。 転んでる藍をまず回収して、謝って逃げよう うん、それがいい。 思い立ったらすぐ行動する。 それは兄さんと藍も俺も同じだ。 小走りで、藍のところまで行って藍を立たせる 耳元で「先行ってて」と言うと、現状を理解したのかコクコク頷いて逃げるように走ってった藍。逃げ足が速い奴め…。 怖いけど、クルッと壱さんの方を向くとその勢いのまま土下座をする 「すみませんでした…ッ!」 上辺みたいな謝罪を一方的に述べ、 ……逃げた。 いや流石に怖いし。 一応俺も極道だけど怖いし。 オーラがもう怖いし…無理。 藍は厨房かな…? と思い厨房に急ぐと藍は泣いていてそこにいた組員が泣いている藍を見て焦っている。 「藍」 多分、怖かったのだろう。 怒られると思ったんじゃないかな… 「お兄ちゃぁぁんっ…置いてってごめんんんんんッ」 いや、そこ…? そこは「お兄ちゃんの言葉無視してごめんなさい」じゃない? 走るなって言ったのを無視しなかったらこんなことにならなかったし。 まぁ、いいんだけど。 「…大丈夫だから、泣かない。」 頭を撫でてあげると、抱き着いてきた。 しゃがんでいたから、後ろに転ばないように慌てて体制を立て直し、背中をさすってあげる。 「お兄ちゃん…」 「ん?」 「…怒ってる?」 「ふふっ、怒ってない」 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で言われつい、笑ってしまう それに安心したのか、藍はちょっと笑った。 藍の頭を撫で続けていると、「ヒぃッ!!」と組員が声をあげた …え、なに。 組員の目線は俺たちの後ろに向いていて、何かと思い後ろを振り向く 「ヒぃッ!!」 人って身が凍りそうなことがあると同じ言葉しか言えないんだとこの時思った。
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