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気づくと、ふわふわした感覚で意識が浮上した。
ゆっくりと、目を開ける…。
白い天井…病院かな。
俺が寝ているベットを囲むように、兄さん、両親、何人かの組員と長谷部がいた。
長谷部は、俺の手を握って、目をつぶって泣いていた。
父さんたちは泣いていなかったけど、思いつめた様な顔をしていた。
なんでそんなに悲しそうな顔してるの…
声を出したくても、出せない…
右手は長谷部が握ってるから、左手を動かした。
その左手で長谷部の頭を撫でてあげると、長谷部はビックリして顔をあげた。
「…祐さんッ」
良かった。そういって長谷部は俺の手を握ったまま涙を流す
長谷部の声で、俺が目を覚ましたのが分かった父さんたちも、ビックリした様子だったけど、声をかけてくれる。
「祐…大丈夫なのか」
いつもみたいな怖い顔じゃない父さんが俺の顔を覗いて言った。
父さんは組長で、いつもは怖い顔をしているけど実際は全然怖くない。
…怒ると怖いけど。
「大丈夫、だよ…」
そう言って笑うと、今までどんよりしていた空気がホッとした空気になった。
_____そんなことがあって、兄は俺をいじめてたいじめっ子を締めあげ、父さんは街から追い出し、長谷部はすごく過保護になった。
この時の長谷部の涙と、兄さんが怒ったときの怖さは今でも忘れたことはない。
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