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彼と彼女と彼のソネット
二人の男が連れ立って歩いている。一人は背が低く、禿頭でお世辞にもカッコイイとは言えない中年。もう一人は対照的に背も高く、見るからに爽やかな好青年だ。二人はとある家に入っていく。扉をくぐると中年男性の妻である女が出迎える。男とはどう考えても釣り合いが取れない美人である。
「おかえりなさい」
「なんだ、まだ起きてたのか」
「ご飯にしますか、お風呂にしますか?」
「いや、飯は…。」
「失礼します。…いやぁ、すごいですね。
好青年が女の存在に気づき、中年男性が軽く咳払い。
「家内だ」
「あ、奥さんでしたか。遅くに本当にすいません」
「いや、いいんだよ」
「本部長には、いつもお世話になってます」
「うちの部に今年から入った…」
「何がですか?」
女は不機嫌そうな顔。
「何がですか?」
何を聞かれているのか分からない好青年は、思わず聞き返す。
「…何が、何がでしょう?」
「何がでしょう、ですって!?」
突然、女は男につかみかかる。中年男性が慌てて、それを止める。
「止めなさい、止めなさい。落ち着きなさい」
もみ合いになる三人。なんとか妻を押し止めた男は、自分の部下に声をかける。
「大丈夫かね?
「ええ、何とも」
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