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女はその様子を面白くなさそうに見つめていたかと思うと、突然、倒れこむ。すぐさま若い男が駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
『どうして主人じゃなくて、あんたが来るのよ。自分ばっかり、あの人に心配されて!』と存外に言わんばかりの顔で好青年を女はにらみつけ、何事もなかったように立ち上がる。何がなんだか分からない中年男性は、自分の妻に状況を説明し始める。
「…一緒に飲んできて、電車が終わったから今日は泊まってもらおうと」
「ご飯にしますか、お風呂にしますか?」
「ああ、うん。ご飯は食べてきたんだ。飲んだ後にそこのラーメン屋で」
「何がですか?」
中年男性の話をぶった切って、またも好青年に問いかける女。
「何がすごいんですか」
「いや、あの、家がです。すごいじゃないですか、ものすごい大きくて」
「四月に建ててもらったんです、主人に」
「さすがですね、本部長。自分もこんな家に住んでみたいですよ」
「それで、…今日からここに住むということなんですか?」
「え?」
「私を追い出して、主人と、二人で、ここで、一緒に住むつもりなんでしょう」
「何を言っているんだ」
中年男性は妻の肩に手を置き…、瞬間、女はそれを跳ね除ける。
「止めてください、こんな時ばっかり」
「…いったいどうしたって言うんだ」
「二回、触りました。いいえ、三回です」
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