彼と彼女と彼のソネット

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女は奥の部屋に姿を消す。 「すまなかったね、みっともないところ見せて」 「いえ、そんな」 「…お願いがあるんだが、いいかな?」 「なんでしょう?」 「今日のこと、会社では内緒にしてくれないか」 「もちろんです」 「ありがとう」 「本部長の言った通りでした。…美人で、若くて、料理うまいかどうかは分からないけど、気が利いてるかどうかも分かんないですけど」 「最高の奥さんだろう」 「ああ、うん、…ええ」 若い男は爽やかに笑う。 「お風呂、本当に良かったかい?」 「ええ、大丈夫です」 「シャワーも?」 「浴びたほうがいいですか」 「気にならないなら別に」 「気になりますか?」 「…いや」 中年男が若い男の手を握る。 そして、二人は手をつないで女が去ったのとは違う部屋に入っていく。 おしまい。
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