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夜。
私は意を決して部屋に戻ることにした。せめて財布とスマホぐらいはとってこないと飢え死にしてしまう。
ガチャ
玄関を開け電気をつける。スズメバチは見当たらない。
バアン! ダン ダン
その場で壁を叩き足踏みをしてみる。が、反応はない。
どこかに行ったかな?というより奴らはどこから現れどこに去っていったんだろう。
部屋の電気をつけてみる。
やはりスズメバチの姿はない。ぐちゃぐちゃになった部屋があるだけ。
どこかに隠れているかと思いまた壁を叩き足を鳴らしたが反応はない。どうやら本当にいないようだ。
「はあ…」
部屋を見渡しため息をつく。どこから手を付けたものか。
そうしてふとPCの方に目をむけ、私は硬直した。
PCの上にあったのは酒の空き缶。その中身はすべてPCの上にぶちまけられていた。
私は即座に缶をどかしPCを持ち上げた。
ボド ボドボドボド
おびただしい量の酒がPCから湧き出る。
電源ボタンを押したがもちろん反応はない。
「あ、あああああああぁぁぁ‥‥」
私は崩れ落ち手と膝をついた。これではもう修理もできない。中のデータも全部パァだ。
終わった―――
もう何もする気が起きない。ここまでが奴らの作戦だったのだろうか。あの奇妙な編隊はスズメバチを呼ぶ儀式だったのだろうか。いや、そうに違いない。そしてあのでかい蚊は今もどこかで生きている。
敗北。完全な敗北だった。
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