DAY2

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DAY2

ぐつぐつぐつ。 お湯が煮立っている。 私はパスタの封を切りお湯の中に投入した。塩も一つまみ。 今夜はミートソーススパゲティだ。といっても市販のものではない。 今は亡き母直伝のスペシャルなやつだ。 これは恐ろしく手間がかかるがその分味は絶品。どこに出しても通用するだろう。 ソースは既にできていて流し台のところに置いてある。 キッチンが狭いのでここしか置くところがない。 「♪~♪~」 鼻歌交じりに菜箸でパスタをほぐす。 私は上機嫌だっだ。しかし、 ぷぅ~~ん 耳障りな音がした。 蚊だ。 首を振り蚊を追い払おうと試みる。 ぷぅ~~~ん 効果はない。 「はあ…」 私は菜箸を手放し蚊を退治することにした。 バシッ バシッ …ぷぅ~~~~ん 当たらない。キッチンの上は薄暗く、蚊の姿がとらえにくい。何故上にばかり逃げるのか。 目を凝らして奴の姿を探す。 ―――いた。 キッチンの上の備え付けの棚に奴はいた。背を伸ばせば何とか届く位置だ。 「ハッ」 軽くジャンプするようにして蚊を叩く。 バシィ やった。仕留めた。 しかし勢いあまって倒れそうになる。とっさに手を出す私。そして―― ガコッ 蛇口のレバーを倒してしまった。 その瞬間滝が出現した。母との思い出の詰まったミートソースの上に。 ドドボドドドボドドドボドドドボド 無駄に勢いのいいウチの蛇口。 あわててレバーを戻すも時既に遅し。 スペシャルなミートソースを6倍に薄めるというアレンジを加え私の夕食は完成した。 「…」 その場にへたり込む。涙がにじむ。 「…くううううううぅぅ」 悔しい。蚊ごときにのために夕飯を失った。 作り直す?馬鹿らしい。買い出しを含めたら2時間はかかる。 もういい、今日は寝よう…。 私は半べそをかきながら就寝した。 ――翌朝。 私は手と足とこめかみを刺されていた。 ぽりぽりぽりぽり… かゆい。 私は一人舌打ちをした。 怒りと悔しさに顔を歪ませながら。
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