3人が本棚に入れています
本棚に追加
私は攻撃を一時止め、意識を観察に回すことにした。
しかし蚊はこちらが目を向けると物陰に隠れてしまった。
そして物陰をのぞき込むと私に向かって飛び、顔の横を通り死角へと消えていく。
……こちらの目の動きを読んでいる?
今度はゆっくりと手を構えながら近づいてみた。
すると蚊はジグザグに飛行し始めた。これでは狙いがつけられない。見失わないようにするのがやっとだ。
そうして距離をとるとまた物陰へ。
私は顔をしかめた。何だこいつは???
視線を切り、的を散らしてくる蚊など聞いたことがない。
さらに私は自分の体に異変が起きていること知った。
(…?)
かゆい。腕がかゆい。
見ると左腕が二か所赤くなっている。
一体いつ刺されたというのか。まるで覚えがない。私はほぼ絶えず動いている。刺せるわけがない。何が起きているのか。わからない。
今わかるのはこれは普通の蚊ではないということだけ。
「ふぅ…」
浅く呼吸をし気合を入れなおす。
私は今まで以上に慎重に近づき、力を貯め必殺の一撃を放った。
パァン!
手が拍子を打つ刹那、私は見た。攻撃を寸前で身をひるがえして躱し、そのまま私の腕を一刺しする蚊の姿を。
ぷぅ~~~~~~ん
そしてそのまま顔の横を通り去っていく。
その攻防一体の動きをみて私は顔を青くした。
エースだ。
エースが来たのだ。
滅びたコロニーの復讐に刺客として。
しかしここは私の家。相手がだれであろうと侵入者は撃退しなくてはならない。
最初のコメントを投稿しよう!