失うくらいなら持たない方がいい 2

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「……す、すごいですねっ!! こ、これ、一体誰が歌ってるんですか!?」 動画を見終えるなり場所を考えず彼女は叫びだしたので、とりあえず二人分の荷物を担いで手を引いて外に出た。 急いだせいですっかり荒くなった呼吸を整えながら言う。 「あ、あのなぁ……あなた、あそこが図書館ってこと忘れてないか?」 「す、すいませんっ! その歌と演奏が、あまりにも上手で……」 彼女が上目づかいで目を輝かせていた。これ以上何言っても無駄な気がしてきた……。 「と、とりあえずだ。コレ、荷物な。……それで今日のバイトのシフト、何時上がり?」 「あ、どうも。え? えっと……7時です」 「7時か……。うん、分かった。じゃあ7時前に」 「あ、はい……、って、え!?」 『ど、どういうことですか!?』という彼女の叫びを背に受けながら、僕は駅に向かった。 駅に向かう足取りは軽く、この後のスケジュールを組み立てるのが堪らなく楽しかった。
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