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「……す、すごいですねっ!! こ、これ、一体誰が歌ってるんですか!?」
動画を見終えるなり場所を考えず彼女は叫びだしたので、とりあえず二人分の荷物を担いで手を引いて外に出た。
急いだせいですっかり荒くなった呼吸を整えながら言う。
「あ、あのなぁ……あなた、あそこが図書館ってこと忘れてないか?」
「す、すいませんっ! その歌と演奏が、あまりにも上手で……」
彼女が上目づかいで目を輝かせていた。これ以上何言っても無駄な気がしてきた……。
「と、とりあえずだ。コレ、荷物な。……それで今日のバイトのシフト、何時上がり?」
「あ、どうも。え? えっと……7時です」
「7時か……。うん、分かった。じゃあ7時前に」
「あ、はい……、って、え!?」
『ど、どういうことですか!?』という彼女の叫びを背に受けながら、僕は駅に向かった。
駅に向かう足取りは軽く、この後のスケジュールを組み立てるのが堪らなく楽しかった。
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