失うくらいなら持たない方がいい。

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何故か、彼女はいつも一人だった。 僕が見かける時は、ほぼ必ずと言っていい。 「……八嶋春子か。有名ですよ。交友関係はほとんどなし。友人なし、教授はおろかバイト先ですら最低限の会話しかしない。何があったのか……」 諸山にそう聞いた時は驚いた。 確かに、彼女は普通の人と比べれば静かな方だった。 でも、その交友関係の徹底ぶりには唖然とするしかなかった。 彼女は、意図的に人を避けている。 そんな彼女に、どうして僕なんかが話しかけられるだろうか。 加えて僕はひどく臆病だった。 ほぼ毎日のように相席するにもかかわらず、言葉を交わすにしても二言、三言ぐらいがせいぜい。 それから先はどうも怖くて無理だった。 ーーー先輩は怖がり過ぎる。当たって砕けろ精神が足りてない。 諸山に言われた言葉だけど、確かにその通りだった。でも、いったいどうすれば……。 一方的な好意の押し付けなど、上手くいくはずもない。 だからまず僕は、彼女を知らなければならなかった。
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