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第一章 海斗の場合
目が覚めるとそこには誰もいなかった。
(あれ? いつの間に寝ちゃったんだろ)
夕日に染まる教室の中、海斗は辺りを見回した。
(マジかよ。誰も起こしてくれなかったの?)
海斗は急いで机の中身を鞄に放り込むと教室を飛び出す。
廊下は静まり返り、人影ひとつ見当たらない。
(完全に置いてけぼりか。――コレじゃあ急いでもしゃあないな)
海斗はトボトボと廊下を歩き、階段を下りる。
静かな校舎に足音を響かせ、海斗は正面玄関に着いた。
海斗が古くなったガラス扉を押し開けると、扉の軋む音が耳に障る。
海斗は外に出ると立ち止まり、周りの様子を伺った。
何かが動く気配もなく、先生の車すらない。
(まったく、みんな行っちまいやがって)
海斗は校門を抜け、ブラブラと歩き始める。
(やれやれ、どうすっかな~。そうだ、商店街に行こう! あそこなら誰か居るかも。最悪、本屋で立ち読みも出来るしね)
海斗は暫く歩いてたが、誰ともすれ違わなかった。
(だから予定通り夜にすれば良かったんだよ。車は目立つんだからさぁ。そりゃあ皆ついてっちゃうよね!)
曲がり角を曲がった先に、海斗は誰かが居るのを見付けた。
(みっけ! フフフッ、驚くかな~?)
海斗は姿勢を低くし、背後から静かに忍び寄る。
海斗はそっと鞄の中に手を入れる。
もう海斗自身でもニヤニヤするのは止められなかった。
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