ブラック・ミックスジュース

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「なかなか鋭い」 馬鹿馬鹿しいと分かっている。けれど、あいつのせいとしか思えない。 直感、第六感、ただの勘。なんでもいい。とにかくあいつと会いたくない。会ってはいけない。 そう思っていたのに、ありえない程あっさりとまた出くわした。 河原で目撃した2日後の今日。怖いもの見たさで俺は近所の公園にある池を見に行った。蓮の花が咲いてあるかと思ったのだ。あいつは、あろうことかその公園のベンチに腰掛け、缶ジュースを飲んでいた。飛びすさってそいつから遠のくと、ゆっくり顔を上げた。 オーラがあるのか知らないが、上下真っ黒の細身のスーツは、俺の父さんの持っているどのスーツより高そうに見える。 「本来業務でしかこちらには来ないが、気がついているようだから私も注視していた」 以前の枯れた声ではなく、若い男の声だった。そのとき、俺はなぜだか一度もその男(声の低さからして多分男なのだろう)の性別を気にしなかったことに気がついた。 テレビの俳優のようにはきはきと話すから、本当に俺に話しかけているのか疑いたくなる。 「声は…前はもっと年寄りの声でしたよね」 「あのときはまだ調整が済んでいなかったから」 「ちょ、ちょうせい?」 「準備不足が多かった。だからあなたに怪しまれた」 残念ながら今でもクソ怪しい。 男は口の端を曲げた。 「どう見ているのだろう、私を」 「どう…?」
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