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二人の夕飯が終わった。たくさん食べた後、その日もタクシーで家に帰る事になった。食前酒と言えども飲んで帰すのは心配だと谷中さんが言ってくれたのだ。すると偶然にも前回と同じ運転手が迎えに来てくれた。 「あっ。この前のお客さんですね。同じマンションで良いのかな?」 「よく覚えていますね」 「あの日は女性のお客さんが多くてね。何故だか皆貧血で具合が悪くて、病院まで乗っけて行った覚えがありますよ。だからよく覚えていてね。お客さんもあまり具合が良くないみたいでしたね。だから貧血かなと心配でした」 「私は眠くて。」 (貧血?!血?!嫌だ。また血の話) 理沙はその後の言葉を続けた。 「眠くて、私は酔っていましたからね。それより貧血の方が多かったのですか?」 「はい。女性は多いですからね。でもあの日は特別だったな。四人位たて続けに。真っ青でフラフラでした」 偶然にしても4人では多すぎる。あの日は確か夜遅くにタクシーを呼んだ。 (車内で金縛りにあって蚊に刺されたのだっけ) 理沙は当日の事を思い出す。そうだ蚊がニヤリと笑ったのだ。あの日からどうもおかしい。 「一人だけかなり重症の人がいたな。大丈夫だったかな」 タクシーの運転手が一人事のように話す。 「フラフラして病院に入って行ったけど心配だな」理沙も頷いて 「そうですね。貧血も重症だと命に関わりますからね」 と同意した。 「私が血を分けてあげたくなりましたよ」 (その人も血が欲しかったんだ。蚊のように・・・) 理沙はゾッとすると同時にマンションに一人で帰るのが怖くなった。
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