覚えのない記憶

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 この時、マーヴェラは思った。  あぁ、二人にとても心配をかけてしまい、悪いことをしたのだな、と。 「一時はどうなるかと思ったよ……。目が覚めてよかった……」 「……」 「3日も目を覚まさないんだもの。心配したのよ。大丈夫?」  優しい両親に囲まれ、マーヴェラは問われるままにゆっくりと頷いた。  そんな彼らの傍にいた男性医師は、隣にいる助手と思われる女性に何かを告げると、女性はすぐさま手に持っていたボードに何事かを書き留める。そして医師はマーヴェラの脈をとり、熱を測り、何か他に異常がないかどうかを確かめた。 「うん。熱も下がって容体も安定しているようですね。意識もハッキリしているようですから、もう大丈夫でしょう。念のため薬を処方しておくので、3日はきちんと服用してくださいね」  耳につけていた聴診器を首にかけ直しながら、助手が用意して持ってきた薬をリリアナに手渡した。  リリアナはそれを大切そうに胸に抱きしめて微笑む。 「ありがとう、ゲーリ。忙しいのに来てくれて……」 「いいえ。他ならぬリリアナ様のご用命とあれば、いつでも駆け付けますよ」  にっこりとほほ笑み、ゲーリと呼ばれた医者は荷物を手に席を立った。 「また何かあれば呼んでください。あと2、3日はデルフォスに滞在しておりますので」 「ありがとう、ゲーリ殿」  レルムも礼を述べると、ゲーリは笑みを浮かべて恭しく頭を下げ部屋を後にした。 「私も、水を変えて参りますね」  ドリーも手桶を持って立ち上がると部屋を後にする。
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