第1章

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看護学生にとって、実習は心身共に疲弊する場だ。とにかく現場では誰彼無しに頭を下げる。邪魔にならないよう気を使う。看護師に声をかけるタイミングがわからない。おろおろする。学生カンファレンスでは勉強不足を指摘される。いたたまれない。実習記録が書き終わらない。寝不足。横になっても『学生さーん』と自分達を呼ぶ指導看護師の声の幻聴がする。 いつもなら只々実習終わりが待ち遠しい。 しかし産婦人科実習は、ほんとうに終わってほしくなかった。 4周目、実習の終わる週。ウララはいなかった。 こっそりスタッフの勤務表を確認する。 本日月曜日、ウララは公休。そして明日の火曜日、今度は有休。翌水曜日、やっぱりウララは有休。そしてようやく木曜日、ウララは夜勤入り。この病棟は2交替勤務。夕方16時30分から翌朝9時までが夜勤の時間。 実習時間は16時まで。木曜日のウララの出勤時間には、もう病棟を出なければならない。 そして実習は月曜日から木曜日まで。金曜日は学校に行くと決まっている。 私は胸をぎゅっと掴まれたみたいに痛みを感じた。 ウララに会えない。 このまま、ウララに会えないまま、実習が終わってしまう。 恋する気持ちはマックスに昂まっていた。 そして私はある事を決意する。
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