縣の嫁

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次に目が覚めた時、一緒に寝ているはずの信孝さんの姿がなかった。 先に寝ちゃったから飽きられた? やっぱり別れようか・・・ そう言われるんじゃないかって思って、辺りを探し回った。 「奥様、如何しました?」 「あ、あの・・・信孝さんを見掛けませんでしたか?」 部屋を出た所で堀さんと鉢合わせになった。 「信孝さんは、広間です。昆さんや、一央さんとご一緒です。奥様、昨日お風呂に入らないで寝ましたか?」 「何でそれを」 「服が昨日のままです」 堀さんに言われて、着替えもしていなかった事に気が付いた。福光の家からそのまま来たから、考えてみたら何も持ってこなかった。 「取り敢えず、お風呂に入って下さい。信孝さんに着替えを準備するように言いますから。それと奥様」 まだ、何かあるの? 今度は何? おっかなびっくり彼女の顔を見た。 「早めに玄関のお掃除と、靴磨きもお願いします」 お嫁さんというより、お手伝いさんといった方が正しいかも。ここで溜め息をついたら、更に機嫌を損ねるだけだし。 「急いでお風呂に入ってきます!」 堀さんから逃げるように浴室に向かった。 はぁ・・・ 縣家の浴室はうちの何倍も広い。木の温もり溢れる檜の浴槽も大きくて、手足を思いっきり伸ばしてもまだまだ余裕がある。 昨日の夜、疲れて疲労困憊の状態でふらふらになりながら、ここを掃除したのが一番効いたのかもしれない。 はぁ・・・ さっきから何度もため息を吐いている。だって、それしか出ないだもの。 ガタンって音がして、顔を上げると、そこには怪訝そうに顔をしかめる信孝さんがいた。 ほったらかしにして、先に寝ちゃったからだ。だから、怒っているんだ。素直に謝らないと。
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