縣の嫁

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「信孝さん、変な事聞いていい?」 「ん、何!?」 「やっぱりいい」 別に聞かなくてもどうって事ないし。 「何で!?何、何?俺には聞けないこと?」 ぷくっと彼の頬っぺたが少し膨らむ。 「本当に、変な事だから、笑わないでよ」 一応、念を押して。 「信孝さんのお父さんの事、何て呼べばいいのかなと思って・・・縣の皆さんは、頭とか、親父(オヤジ)とかそれぞれ違うし、信孝さんはお父さんでしょ」 「言われてみれば、呼び方って意外と難しいかも。まぁ、本人に聞くのが一番だと思うよ」 そう言って、信孝さんが、体を捻って上を見た。 え!?何!? 僕もつられて、見ると・・・。 「尚也、朝早くから精がでるな」 そこに立っていたのは、煙草を手にした信孝さんのお父さん。昨日とは違って、黒のスーツをびしっと身に付け、近寄るのも怖いくらいのオーラを放っていた。まるで、別人の様。 「何、ぼぉっとしてる、頭に靴を」 お付きの若い衆の方にそう言われたけど、どれだか全く分からない。みんな同じに見えるし、名前がいちいち書いてあるわけじゃないし。見かねた信孝さんが、 「ナオが今持っているのがそう」 って、教えてくれて、慌てまくった。「す、すみませんでした」 呑気に座っている場合じゃない。 急いで腰をあげて、持っていた革靴を揃えて、信孝さんのお父さんの前に置いた。
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