それでも彼と生きていく

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それから、どのくらいの時間が経過したのだろう。 気が付けば、布団に横になっていた。 浴衣は、枕元にきちんと畳んであって、それから、信孝さんと、昆さんが側にいたのが分かったけど。 あの影は、まだ、僕にのし掛かっててーー。 「ナオ、良かった、気が付いて」 信孝さんが僕の顔に手をかざそうとしたのは分かったけど。 「イヤーーーーァ!!」 僕の目には、黒い影が腕を伸ばしてきて、首を絞めようとしか見えなくて。 飛び起きて、叫び声を上げながら、わめき散らした。 「来ないで!来ないで!いやだ、いやーーぁ!」 頭を抱えながら、その場に崩れ落ちた僕を、成す術もなく、見守るしかない信孝さん。 きっと、呆れてる。 僕だって、こんなの嫌なのに、体がいうことをきいてくれない。 その時ーー。 障子が開いて、誰かが、駆け寄ってきて、ぎゅっと、抱き締められた。 「兄貴たち、あんたらいたら、逆効果なの、分かんない?」 怒気を孕んだ声が部屋中に響き渡る。 「ナオと二人にして、早く」 信孝さんと、昆さんを追いたてるように、部屋から出して、その声の主は、ようやく名前を名乗った。 「柚よ。ごめんね、留守してて」 頭を優しく撫でるその手は温かく。 何でだろう、すごく、懐かしい。 そうだ、信孝さんの妹さんだ。 「柚・・・さん!?」 だんだんと、黒い影が薄くなって、視界が開けていくのを感じた。 「私もね、ナオと似た経験をしたの。フラッシュバックっていうの、随分たつのに、たまにふと思い出して、ナオみたくなる。私は、一央や、子供たちがいるから、何とか、生きてこれた。辛くても思い出したくなくても、それでも生きていかないと行けない。ナオは、一人じゃない。兄貴たちと、私たち家族、龍、遼禅さん、和江さん、堀さん、みんながみんなナオの味方だから、一緒に乗り越えよう」 柚さんは、僕の為に、泣いてくれていた。 まるでお母さんの様な慈しみに包まれ、僕も、彼女の腕の中で涙を抑えることが出来なかった。
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