彼と兄と生きていく明日へ

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信孝さんが隣に移動してきて、ぴったりと肩を寄せ合った。 「キスしてもいい?」 こくりと頷くと羽のように優しい口付けが唇に何度も触れてきた。 それだけでトロトロに蕩けそうになる。 体内の熱が彼を欲して蠢き出す。 それなのに、肌を直接触れられると、怖くもないのに、ガタガタと手足の震えが止まらなくなって、しまいには息が苦しくなって・・・ 「ごめんなさい」 「ううん、大丈夫。こうしているだけでも、充分幸せだから」 泣きながら彼にしがみつくと、頭を優しく撫でて貰った。それが、すごく嬉しくて。 不思議と心が幸せに満ち溢れていく。 カラダだけの関係じゃなくて、心も彼と繋がっていることが何より幸せだった。 翌朝ーー。 広間に、縣のみなさん、堀さん、和江さんが一堂に集まってくれた。 「尚也、いつでも帰ってこい」 そう義父さんに言われ、堀さんからは、今までの無礼お許し下さい、と頭を下げられ、逆に恐縮したり、和江さんは、最後まで涙、涙で、僕まで貰ってしまう始末。 最初から、最後まで泣いていた記憶しかないけど・・・。 本当に申し訳ないとしか言いようがなくて。 「柚、今、何て言った!?」 一央さんと、龍さんが同じ事を口にして、顔を強張らせていた。 「だから、子供たちつれて、兄貴と一緒に行って、龍の結婚相手と会ってくる」 「お前な、そこまでしなくても」 一央さんが頭を抱えていた。行動派の奥さんを持つと、その分、心配事も増えるようで。 「龍さんの結婚相手って!?」 「ナイショ」 聞いても、何故か答えをはぐらかせられた。 「信孝、そろそろ行きますか!?」 昆さんにそう言われ、信孝さんが優輝くんを抱っこして、僕が、めぐみちゃんを抱っこして、柚さんと共に、若い衆に見送られて、縣家を後にし、車二台に分乗して、一路、東京駅に向かった。
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