967人が本棚に入れています
本棚に追加
二人の会話に、頭が付いていかない。
「ナオ、大丈夫!?」
「信孝さんは、知ってたの?」
「まぁ、大体はね」
信孝さんが、吉崎さんへと歩み寄っていった。
ちょうどその時、乗車するやまびこ号がホームに滑り込んできた。流線型の車体に、子供たちは大歓声を上げた。
ー只今、到着の新幹線は、九時四十分発、仙台行き。発車まで、暫くお待ちくださいー
アナウンスが、構内に流れる。
「吉崎さん・・・いや、福光翔さん、自分を偽らずに、本当の名前で生きていくのなら、ナオの側にいてもいい」
「信孝さん」
「信孝で、いいよ。あと、ナオは、俺のだからーー大事な妻だから。それだけははっきり言っておく」
周囲の目もあるなかで、真摯な面持ちで、熱っぽく言われ、ドキドキが止まらない。
恥ずかしけど、すごく、うれしい。
「ナオ、いいよね、これで!?」
ダメだとはいえないこの雰囲気に押され、こくりと頷くと、信孝さんも、吉崎さんも、笑顔になった。
「昆、また、来るよ」
「ナオさんだけでいいですよ」
「何、それ」
「私だって、ナオさんを独占したいですし」
「お前には、龍と光希がいるだろう!?」
ん!?
今、光希さんの名前が出たような気がしたけど・・・。
あれ!?
ーまもなく、発車します。ご乗車のお客様はお急ぎ下さいー
流れるアナウンスに音がかき消されて、よくは聞こえなかった。
最初のコメントを投稿しよう!