彼の気持ち

3/10
961人が本棚に入れています
本棚に追加
/392ページ
耳元が妙にくすぐったくて目が覚めた。 信孝さんの服を抱き締めたまま、眠っていたらしい。薄暗い中、背後に人の気配を感じ、眠気眼を擦りつつ顔を後ろに向けると、そこには眠っている信孝さんがいた。 わっ、わっ、わっ! 嘘・・・!? 何で、何で。 ビックリし過ぎて、一気に眠気が飛んだ。 まさか、こんな恥ずかしい格好を見られるとは・・・しかも、距離が近過ぎる。 少しだけ体をずらそうとしたら、枕元のテールランプの明かりが灯り、彼の腕が腰に回ってきて、そのまま抱き寄せられた。 「ちょ、ちょっと、まっ、待って!!」 あまりの突然の事に驚き過ぎて声も出ない。 「そんなに嫌か?この前もそうだったよね!?龍には素直に抱かれて・・・何で俺はダメなの?」 「この前って・・・」 ウェディングドレスを着せられた時だ。 「あ、あの時は、恥ずかしかっただけ。みんなに見られて・・・りゅ、龍さんは、信孝さんの弟さんだし・・・の、信孝さん、ちょっと待って!」 言い終わらないうち、耳朶をねっとりと舐められた。 「ナオの花嫁姿、すごく可愛いくて、理性を保つの、かなり大変だったんだよ。更衣室であのまま襲い掛かかろうとしたけど、必死で我慢した。それなのに君はーー大事そうに俺の服を抱き締めて・・・本当、可愛い。そんなに煽られたら、我慢出来ないだろ?」 熱を帯びた濡れた目で見詰められ、心拍数が一気に羽上がった。 「ナオ・・・」 信孝さんがおもむろに体を起こし、身を屈め、首筋にチュッと軽く口付けをしてきた。
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!