彼の気持ち

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「信孝さん!」 龍さんにお酒を呑まされて、酔っ払ってる? でも、彼は下戸のハズ。 なら、本気? そうだとしたら・・・ 戸惑う僕に、彼が耳元で甘く囁いた。 「ナオは、俺の事が好きなんだろ?」 小さく頷くも、幸せそうに微笑む茉弓さんの顔が浮かんできて、慌てて首を横に振った。 ダメ! ダメ! 涙で目が霞む。 今、好きだと言ったら、茉弓さんを裏切ることになる。これから産まれてくる赤ちゃんからパパを奪ってしまう事になる。 二人には、信孝さんが必要なのに・・・。 「茉弓さんは?まゆ・・・」 言葉を封じるかのように、彼の口唇が僕の唇に重なった。 「今はその名前、聞きたくない。龍も、光希も、昆の名前も。俺だけ見て欲しい。ナオ・・・好きだーー愛してる」 更に力強く抱き締められた。 「駄目だよ。茉弓さんには、信孝さんが必要なんだよ。お腹の赤ちゃんも、信孝さんがいなきゃだめ」 目にいっぱい涙を溜め、やっとの思いで言葉を紡ぎだした。 「だから、茉弓の話しはもういい。何度言ったら分かるんだ」 怒気を孕んだ彼の声が部屋の中に響き渡った。 「信孝さん・・・」 怒ると、こんなにも怖い顔をするんだ。 いつもにこやかに笑って、優しいのに・・・
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