961人が本棚に入れています
本棚に追加
/392ページ
「信孝さん!」
龍さんにお酒を呑まされて、酔っ払ってる?
でも、彼は下戸のハズ。
なら、本気?
そうだとしたら・・・
戸惑う僕に、彼が耳元で甘く囁いた。
「ナオは、俺の事が好きなんだろ?」
小さく頷くも、幸せそうに微笑む茉弓さんの顔が浮かんできて、慌てて首を横に振った。
ダメ!
ダメ!
涙で目が霞む。
今、好きだと言ったら、茉弓さんを裏切ることになる。これから産まれてくる赤ちゃんからパパを奪ってしまう事になる。
二人には、信孝さんが必要なのに・・・。
「茉弓さんは?まゆ・・・」
言葉を封じるかのように、彼の口唇が僕の唇に重なった。
「今はその名前、聞きたくない。龍も、光希も、昆の名前も。俺だけ見て欲しい。ナオ・・・好きだーー愛してる」
更に力強く抱き締められた。
「駄目だよ。茉弓さんには、信孝さんが必要なんだよ。お腹の赤ちゃんも、信孝さんがいなきゃだめ」
目にいっぱい涙を溜め、やっとの思いで言葉を紡ぎだした。
「だから、茉弓の話しはもういい。何度言ったら分かるんだ」
怒気を孕んだ彼の声が部屋の中に響き渡った。
「信孝さん・・・」
怒ると、こんなにも怖い顔をするんだ。
いつもにこやかに笑って、優しいのに・・・
最初のコメントを投稿しよう!