彼の気持ち

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しばらく沈黙が続きーー。 「いつまでそれ、抱き締めてるの?」 急にクスクスと笑いだした。 「へ!?」 「へ!?じゃないだろ。ナオは本当、泣き虫だね」 「もう・・・怒ってない?」 「怒ってないよ」 普段通りの優しい笑顔を見せてくれる彼に、ほっと胸を撫で下ろした。 「の、信孝さん!あ、あの・・・」 僕の手に握り締めてあった服を布団の上に置くなり、ゆっくりと覆い被さってきたから、もうビックリして声を上げた。 「色気のない声を上げるな。折角の雰囲気が台無しだろ?」 いつもとまるで違う真摯な眼差しで見詰められ、ドキっとした。心音も半端ない速さでリズムを刻んでいる。 「昆から聞いたと思う、俺の事・・・。母が亡くなり、龍の父親に柚と一緒に引き取られた。周りは知らない大人の男ばかりで、柚を守るのに精一杯で、誰にも甘えられず、無我夢中で必死に生きてきた。その反動だろうな、大人になってから、誰かに甘えたい、一人ぼっちは寂しくてイヤだーーその思いがどんどん強くなっていったんだ」 信孝さんの温かな掌が、頬に羽のようにそっと触れてきた。 「昆には、甘えん坊の寂しがりやと言われた。甘えられれば誰でもいいという訳じゃない。ナオになら、本当の姿見せてもいいと思った。君なら、男として情けない俺の事、何も言わず黙って受け入れてくれるって」 彼のしっとりと濡れた口唇が、額に、頬に軽くキスをしてきて、最後に唇に重なった。
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