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「うっ・・・ん」
隙間から侵入してきた彼の舌が歯列を舐め上げ、僕の舌に絡み付き、ねっとりと撫で回す。
ぎこちないながらも、懸命にその愛撫に応じようと頑張った。
今にも甘く蕩けてしまいそうな、そんな濃厚な口付け。何でだろう。キス自体初めてのハズなのに・・・前にも誰かに抱き締められ、こんな風にキスされたような・・・
ようやく彼の唇が離れ、一筋の唾液が糸を引くように口元から溢れ落ちる。
「良かった感じてくれて」
彼の舌がぺろっとそれを舐めてくれた。
「ナオ?」
怪訝そうに名前を呼ばれはっと我に返った。
「ごめんなさい・・・」
信孝さんを悲しませるつもりはなかったのに・・・
「いいよ、だって俺より、ナオの方が辛い思いをしてきたんだ」
信孝さんの掌が頬を優しく撫でてくれた。涙が出るくらいあったかい。
「俺がしっかりしないと、そう思って、ずっと我慢してきた。でも、もう限界・・・今すぐにでもナオが欲しい」
「信孝さん・・・」
熱を帯びた眼差しを向けられ、心が振り子のように大きく揺らいだ。
彼の本当の姿を知ってもなお、彼への思いは代わらない。代わらないどころか、愛しさがどんどん増すばかりでーー
「すき・・・だいすき!」
彼を好きというこの熱い気持ちを諦めたくない。後悔したくない。
彼に抱きつき、自らキスをねだった。
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