素顔の彼

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誰かが僕の名前を呼んでいる。 顔は靄がかかりよく見えない。 ーナオ、おいでー 両手を広げ、優しく僕を呼ぶ。 ・・・違う、本当の彼は・・・ その笑顔、優しさはニセモノで、本当の彼は・・・ 「いゃあぁぁーー!止めて!」 強引に組伏せられ、下肢に激痛が走る。 「何で?何で?」 涙でぐっしょり濡れたシーツを掴み、その痛みに必死で耐える僕に、冷たく、獰猛な眼差しで薄笑いを浮かべる彼。 これからされる事への恐怖。 何よりも、信じていた人に裏切られた深い悲しみに、心が慟哭し、血の涙を流す。 「ーー止めて!!」 バラバラと、心が音を立てて壊れていくのを感じ、絶叫した。 いやだ! いやだ! いやぁ・・・! 「・・・ナオ・・・ナオ」 体を揺すぶられ目を覚ました。 瞼が腫れているのか、重たくてなかなか開けられない。 「大丈夫?うなされていたみたいだけど」 「の・・・ぶ・・・た・・・か・・・さん?」 「そうだよ」 「本当?」 「どうした、変だよ」 決して彼を困らせようとしている訳じゃなくて。 夢なのか、現実なのか頭の中が混乱して訳が分からなくなっていた。 「ナオ」ムギュッと彼がしがみついてきて、ぐりぐりと頭を胸元に擦り付けてきた。
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