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「ナオって、すごくいい匂いがする」
小さな子供が親に甘える仕草に、どきっと戸惑いながら、そっか、昨日彼が言っていた事を思い出した。
こういうときはえっと・・・
取り合えず、彼がしてくれたように髪に触れ、そっと撫でてーーそれからどうしていいか悩んでいると、
「俺だって分かってくれた」
嬉しそうな彼の声が聞こえてきた。
現実だと知って安堵したものの、茉弓さんに対しての罪悪感が一気に押し寄せてきた。大好きな彼と過ごす一時。決して恋人同士にはなれないけど、それでもいい。
「・・・好き・・・」
「ん!?何か言った?」
「ううん、何でもない」
涙を堪え、首を大きく横に振って、彼の大きな背中にそっと腕を回した。
いっそ、このまま時間が止まればいいのになぁーー
「バイト?」
あれから二度寝して、昼近くになって慌てて飛び起きた。隣で添い寝していた信孝さんは、ぶすっとしてあきらかに不機嫌そうで。理由は簡単。
「一日中、ナオと寝ていれるかと思ったのに・・・寂しい」
手を引っ張られ、目で訴えられるもこればかりは仕方ない。
「今夜も一緒に寝るから」
「今日だけ?」
「明日も明後日も、ずっとずっと、一緒に寝るから」
「うん」
ようやく笑顔をみせてくれた。
でも、これって・・・
お菓子売り場で、ちょっと高い玩具付きのお菓子を買って!と親に駄々を捏ね、かごに入れて貰った時に子供が見せるあの笑顔にそっくりで。
昨日までの彼とは全然違うキャラに目眩を覚えつつも、こうして素の表情をみせてくれる事の方が何倍も嬉しかった。
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