素顔の彼

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信孝さんと一緒に、というか正確には、彼が僕に引っ付いて離れてくれなくて。それで、二人仲良く手を繋いで部屋から出ると、リビングでパソコンに向かっていた昆さんと目が合った。 「寝る子は育つ、というけど、寝過ぎです。ナオさんはまだしも、信孝まで」 開口一番かなり呆れていた。 彼は、僕たちの姿を見ても然程驚かず。 「しかしまぁ、一年も一緒にいて、よくバレなかったものだと感心します。ナオさん、今ですよ。焼きもちやきの甘えん坊を突き放すのは」 淡々と落ち着いている昆さんの方が逆に怖かった。彼は一体何者何だろう。 眉一つ動かさない、その表情から伺い知るは出来なかった。 「そういえば龍と、光希は?」 信孝さんが、姿が見えない二人の事を聞くと、表情を一切変えることなく言葉が返ってきた。 「実は明日、龍成さんが見合いをするんです。本人は嫌だとかなり駄々を捏ねまして。理由は簡単です。光希さんの事がどうしても諦めきれないからーーだから、言ったんです。無理矢理でもモノにしたら、見合いをしなくてもいいと。まぁ、昨夜、あれだけナオさんの可愛い声を聞いて、光希さんの方がもっと可愛いと俄然やる気が出たようですよ」 「そうなんだ」 「まともにデートに誘っても下心見え見えで、警戒されて断られるのがオチですからね。ちょうど、光希さんが見たい映画があるみたいで、それを口実に仲良く出掛けていきましたよ。こういうときの龍成さんって、バカがつくくらい素直でイジリがいがあります」 聞いている方が恥ずかしくなるような会話を、ごく普通に交わす二人。 龍さんと、光希さんがまさかそういう間柄だったとは・・・ びっくりし過ぎて、声も出なかった。 「ナオさん、バイトに行かなくて大丈夫ですか!?」 唖然としていたら、昆さんに言われて、そうだった!とようやく思い出した。 「送っていくよ」 何度も彼の笑顔を見ているはずなのに、苦しいくらい心臓がバクバクした。 だって、彼、滅茶滅茶格好いいんだもの。
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