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お陰で、バイト中、色々考えすぎて、ミスってばかりで、先輩のパートさんにいっぱい怒られた。本当に何しているんだか。自分が情けない。
バイトが終わり、信孝さんに迎えを頼もうと携帯を耳にあてた。
『終わったの?じゃぁ、すぐ迎えに行くから』
「うん・・・」
彼と会話していると、誰かがすっと目の前に現れた。深い悲しみと、計り知れない憎悪に満ち溢れた視線を向けられ、凍り付いた。
『どうした?』
「ごめん・・・まだ・・・仕事・・・終わらないから・・・」
わなわなと全身が震えた。顎も、唇も、脚もガクガクと小刻みに・・・
慌てて携帯を耳から離しポケットに捩じ込んだ。
「別にいいのよ話しをしてても」
「でも、終わったので・・・」
「そう。悪いけど少し付き合ってくれる?」
「あ、あの・・・茉弓さん・・・」
その人はそう彼の婚約者である彼女でーー
そのあとを黙って項垂れて付いていった。着いた先はイートインコーナーだった。
無料の給水器で温かいお茶を二つ紙コップに入れ、テーブルに置くと彼女が先に腰を下ろした。
「別に何もしないから座ったら?」
彼女に促され、向かい合う形で椅子に腰を下ろした。
「私ね、かれこれ彼と十七年一緒にいるのよ。彼が何を考えているかだいたい分かるのよ。彼がナオくんに一目惚れした事も、あえてあなたの素性を調べようとしなかった事も・・・だって、あなたに万が一でも好きな人がいたらその人に、ナオくんを返さないといけないでしょう。ここまで彼に愛されるあなたが憎たらしいくらい羨ましい」
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