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あのあと、逃げるようにスーパーから帰宅した。
「もともと情緒不安定だったから・・・茉弓の事はもういいだろう。それよりも早く!」
リビングのソファーに腰を下ろした信孝さんが、上に座るよう、ポンポンと軽く膝を叩いた。
「着替えしてくるから」
「待てない。一人でどれだけ寂しかったかナオに分かる?」
うるうると涙目で見詰められ、胸がキュンとしたのはいうまでもない。でもーー、
「信孝さん、あのね」
意を決して切り出した。
「茉弓さんが言っていた事は本当なの?」
信孝さんに烈火の如く怒られると思ったけど、意外にも彼は落ち着いていた。
「そこにいる龍に聞けばいいだろう。ちなみに俺はナオの過去には一切興味がない。知ろうとも思わない。今、こうしてナオが側に居てくれるだけで十分幸せだ」
「でも、彼女を不孝にしてまで・・・」
「ナオ!」
信孝さんが声を荒げた。
「いいなぁ、痴話喧嘩。俺達もしよう」
「龍成、抱き付くな!苦しい!」
差し向かいのソファーでは、光希さんと龍さんがいちゃついていた。というか、龍さんが、光希さんにじゃれつき、うっとおしがられていた。
龍さん、上手くいったんだ。
光希さんも、いやいや言ってる割には嬉しそう。
でも内心は、妹を傷付けた僕に対し、腸の煮え返る思いでいっぱいだろう。なのに、なんで怒らないの?怒りを露にしないの?
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